2010年11月19日金曜日

JOYSOUNDとDAMの興味深い生い立ち

先日のエントリー<【BOOK REVIEW】Jポップとは何か>で、カラオケブームがJポップバブルの一翼を担ってきたと書いた。
そのカラオケに関して興味深い記事を発見した。
それは、JOYSOUNDの11月1日〜7日のランキングで、30位までの半数がボーカロイドの楽曲だったという内容。
サンプリングされた人の声を元に、歌声を合成しているボーカロイド楽曲が、こんなにも広まり歌われていることに驚いた。


しかし、11月8日付のオリコン週間カラオケランキングによると、20位までにボーカロイド楽曲は1つもランクインしていない。
これは一体どう言うことなのだろう。


実はこれにはJOYSOUNDの生い立ちが関係しているのだ。


主なカラオケ機種としては、DAMJOYSOUNDUGAの3種類が挙げられる。
DAMは
第一興商、JOYSOUNDとUGAはエクシングから発売されている。

第一興商は1976年に業務用カラオケ事業を開始するなどカラオケ事業の先駆者的な存在で、90年代までにカラオケ利用の中心地であったナイト市場(主にスナック、キャバクラ等)で業績を伸ばしていった。
一方、エクシングは1992年にブラザー工業、インテック、旧ブラザー販売の3社によって設立された新興企業である。
エクシングは設立にあたり、業務用通信カラオケシステムJOYSOUNDを発売した。
従来のCDやレーザーディスクによるカラオケシステムよりも、新曲を迅速に配信でき低コストで運用できることから、業務用カラオケシステムの主流は通信カラオケに移ろうとしていた時で、エクシングはその新しい市場に一早く参入したのだ。
そこから通信カラオケ黎明期の1990年代頭から半ばに掛けて、一気にJOYSOUNDがシェアトップに駆け上がった。

これらの状況に、今までカラオケ業界トップに君臨していた第一興商は面白いはずがない。
第一興商も通信カラオケシステムDAMの開発に乗り出してはいたが、完成・発売までには時間がかかっていた。
そこで、長くカラオケ業界で手を広げ音楽業界とも太いコネクションを持っていた第一興商は、レコード会社に独占的な利用が認められている専属楽曲を、エクシングに開放承認しないようレコードメーカーに要請したのだ。
そしてなんと、レコードメーカーもそれに応じたのである。
結果、JOYSOUNDは専属楽曲を制限されたため思う様に機器が流通せず、その間に専属楽曲が開放されているDAMの普及が広がりシェアトップに返り咲いた。

なんて不条理な競争なのだろうか。
独占禁止法に触れていると思われる行為がユーザーの知らない裏で共謀されているとは驚きである。

妨害行為により第一興商に追い抜かれたエクシングは、専属楽曲に関与しない新しい道を模索する。
それが、アニメソングなどの大量入曲につながるのである。
またその後はブロードバンド機能に加えて、カラオケSNS『うたスキ』を導入し、うたスキ内の投票数順で毎月上位200位以内の曲をカラオケ化するサービス(リアルタイムリクエスト)により、
東方Projectの二次創作楽曲やVOCALOID関係の楽曲を豊富にそろえたのだ。

今回のJOYSOUNDのランキングには、このような背景による影響があったのだ。
ファンはそれを知って意図的にJOYSOUNDを利用しているということなのだろう。
(ただ上位30曲の中で半数がボーカロイドというのは新しい傾向であり、何か別の原因もあるのだろうから、改めて調べてみたいと思う。)

ちなみに、第一興商は2001年にレコードメーカーである日本クラウン・徳間ジャパンを子会社化したため、日本クラウンと徳間ジャパンの専属楽曲をエクシングには開放しないなど、さらなる妨害行為を行ったそうだ。
自社のコンテンツを競合メーカーに渡さないという建前は分かるが、ユーザー不在の考え方には賛成できない。

ただエクシングも負けてはおらず、2010年にUGAなどを持つ業界2位のBMBを買収・合併しシェア拡大を虎視眈々と狙っている。
現在業務用通信カラオケ業界はエクシングと第一興商がほぼ100%のシェアを握る複占状態となっているそうだ。

カラオケで使用する機器について特に気にした事が無かったが、このような背景や生い立ちがあったとは新たな発見であり驚きだった。






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